醜く、美しい恋愛
「人のセックスを笑うな」(山崎ナオコーラ、河村書房新書、2004年)
タイトルといい、著者名といい、なんなんだこのインパクト…
前から興味はあったのですが、今になってたまたま見かけたので手にとって見ました。
意外と前に書かれていたんですね。
タイトルの意味
もし神様がベッドを覗くことがあって、誰かがありきたりな動作で自分たちに酔っているのを見たとしても、きっと真剣にやっていることだろうから、笑わないでやって欲しい。
(p111-112)
恋愛は、本当は美しくて素敵なものというよりは、醜くて不毛で可笑しいものなのかもしれません。
恋愛をすればいつかは傷つけ合うことになるし、自分の醜さも晒してしまう。
どんなに可笑しくても、本人たちは大真面目なのだから笑い事じゃない、ということでしょうか。
実際、主人公で19歳のオレと39歳のユリの恋愛はかなりいびつだし、あまりうまくいきません。
それでも、作品全体のメッセージは恋愛とか人間に対するありのままの肯定なのだと私は思いました。
ヒロインのユリは、なんだか私と似ているような気がしました。
他人への関心が薄くて、マイペース。
それなのに、人と触れ合うことを求めていないわけでは全然ない。
人の心があまりよく分からないところも。
マイペースで行こう
「曇り、ときどき輝く」(鎌田實、2018年、集英社)
この前ラジオを聴いていたら、たまたま鎌田先生がゲストで登場。
私は鎌田先生のことは全く知らなかったので、どうやら長野県で大活躍しているお医者さんで「温もりの伝道師」なんて紹介されていたものだから、一体何者なんだと思いましたw
声がとても若くて、40代くらいかなぁと思って聴いていたら今年70歳だそうで、びっくりしました。
お話の内容がとても良かったので、紹介されていた新刊を早速読んでみることにしたのです。
一人一人の輝きで、未来を明るく
世界でも、日本でも、おかしなことが多い。秋空のように心がスカッと晴れ渡ることは少なく、どんよりとした曇り空が広がる。そんな時代に僕たちは生きている。だからこそ、一人ひとりが光を発し輝いて、頭上を覆う雲を吹き飛ばそう。(p20)
この言葉、すごく好きです。
今の社会に閉塞感を抱くことはあっても、自分の力で明るくしようと思ったことがあっただろうか。
これからは、何か思うことがあったら批判するだけじゃなく、どんどん行動しよう。
そして、周りの人や社会に少しでも光をさせるような人間になりたい、そう思わされました。
仕事は幸せになるための道具。目標ではない
大事なのは、僕たちは幸せに生きるために生まれてきたということ。幸せになるための道具の一つとして、仕事があること。仕事は決して目標ではないのだ。(p163)
この章では、過労死した高橋まつりさんについて言及されています。
あの事件はかなりショッキングで、私の人生観や仕事に対する考え方にも影響しました。
これから就職するにあたって、自分の人生の主人公はいつも自分でありたいと思うのです。
愛とは醜いもの
恋は一時の病気
恋はいつも終わるものだ。恋が永遠だなんて、そんな子供じみたことはもう考えていない。恋は病気にかかったようなものだから、熱に浮かされる時期が過ぎれば、冷静な自分が戻ってくる。問題は、恋が終わったその後だ。そこから愛という形になりうるのか、それとも別れを選ぶのか、そこで二人は立ち止まり、お互いをはすかいに見つめながら考える。そしてさらに問題なのは、その結論は往々にして一致しないということだ。(p10)
これ、すごく分かるなぁ。
まるで私のことを見ているんじゃないかというくらい当たっていて、怖いですw
というか、これが恋愛の真理なのかもしれないですね。
お金では測ることのできない価値のあるもの
いくらいるの?一万円?それでいいの?返す事なんて気にしないで。もう一万渡そうか?お金を借りることに遠慮なんかいらないわ。お金は、あるところからないところに回ってゆくものよ。友達にだって借りたっていいと思うわ。よく、お金で友情が壊れるっていうけど、私はそうは思わない。それは最初からその程度の友情だっただけよ。本当の友情ってそんなことで壊れたりしないわ。それに、あなたはお金を借りたかもしれないけど、お金では測ることのできない価値のあるものを、友達に与えてあげているはずよ。友達だって、そのことがわかっていれば、貸さないとか返せとか、細かいことは言わないわ。本当の友達であればあるほど、相手に甘えることも大切なの。(p43)
これは、お金にだらしのない男に貢ぐ女のセリフです。
私はこういう考え方、大嫌いですw
お金にルーズな人とは絶対に関わりたくないと思っています。
しかし実際はルーズな人がいることも事実で、このセリフはルーズさを正当化する心理を的確に言語化していると思いました。
嫌すぎて、かえってスカッと(?)します。
この本に出てくる女性たちは皆、すごいドロドロしています。
唯川さんがあとがきで書いていましたが、ここにはきれいな恋愛感情なんかどこにもなくて、女とか人間の嫌な部分やダメな部分が全面に出ています。
読んでいて、うわ、こういうのすっごい嫌だなーと思うのですが、それでもページをめくる手を止められなくて、心の底では共感してしまう、そんな小説です。
やっぱり「愛なんか」、どれだけ美辞麗句で飾ってもこんなものだ、ということなのだと思いました。