化学物質のリスクと人間はどう付き合うべきか?
「生態学と化学物質とリスク評価」
(加茂将史、2017年、共立出版)
私たちの身の回りには、たくさんの化学物質が溢れています。
以前読んだベア・ジョンソンさんの「ゼロウェイストホーム」には、プラスチック製品からビスフェノールAという有害物質が溶け出すので避ける、と書いてありました。
プラスチックは私たちの生活のいたるところに入り込んでいるので、それを完全に避けることは難しそうです。
日常に潜むリスクはどれくらいの大きさで、犠牲を払ってでもそれを避ける必要があるのか。
「生態学と化学物質とリスク評価」は、生態学の専門家が書いた本なので「リスク」に関してどんな考え方をすればいいのか、少しだけわかります。
なくせばいいってもんじゃない
水道水は塩素消毒がなされ、水道法により一定量の塩素が残留するよう義務づけられています。これは、家庭に届くまでに雑菌がわかないようにするためです。ところが塩素処理の過程で、クロロホルム等の発ガン性物質が生成されます。塩素消毒は危険です。ということで、実際に塩素消毒を辞めてしまった国があります。その結果、コレラが流行りました。(中略)このようにある影響をなくそうとすると、別のところに影響が出ることがあります。これがリスクトレードオフです。(p25)
食品添加物もそうですが、無添加が安心だよね、ということで保存料の使用を一切やめたとしたら、当然食べ物が腐るわけです。
腐った食べ物を食べてしまったらお腹が痛くなるし、場合によっては死にます。
そうすると、化学物質の恩恵に預かったほうが安全だと言えるでしょう。
「リスク」と聞くと条件反射的に「怖い」「避けなければ」という考えになりがちですが、多くのリスクは他のリスクとリスクトレードオフの関係にあります。
リスクの問題は、一筋縄ではいかないのです。
この本はかなり難しいです。
後半は化学式や計算式ばっかりです。
私も一応理系ですが、落ちこぼれ東大生なので数式はあんまり見たくありません。
ほとんど飛ばしてしまいました。
化学や数学が得意な人なら、ゴリゴリ読んでリスク評価の手法を理解できることと思います。
結局のところ、リスクとどう付き合ったらいいのか
リスクは、リスクの大きさ×許容範囲で考えることができるといいます。
リスクトレードオフも考慮しつつ、どの程度のリスクなら許容できるのかは自分の頭で考える必要があると書いてありました。