東大生の読書ライフ

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東大生による書評ブログ。

マインドコントロール;「自分は大丈夫」が一番怖い

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「あなたもこうしてダマされる」

ロバート・レヴィーン 著

忠平美幸 訳

 

こんな人におすすめ:

営業の成績を上げたいビジネスパーソン、ダマされそうになってヒヤヒヤした事がある人

分野:心理学、広告

難易度:★★★☆☆

コメント:

心理学の実験に基づくデータや実際に起こった事件のエピソードが満載で、科学的根拠のある一冊。

 

筆者情報

1945年生まれ。米国カリフォルニア州立大学心理学教授。ニューヨーク大学社会心理学の博士号を取得。異文化間の生活ペースの違い、および利他主義の心理について研究し、数々の賞を受ける。

 

印象に残った話:

p250〜のジョーンズタウンの集団自殺事件が衝撃的でした。

ジョーンズタウンとは、ジム・ジョーンズ氏を教祖とするアメリカのカルト集団、人民寺院(Peoples Temple)がアフリカに作った町(コミューン)のことで、そこでは1978年に900人余りの人々が集団自殺させられるという凄惨な事件が起こりました。

ジョーンズタウン - Wikipedia

 

ちなみに、このwikipediaでは集団自殺の場面を録音した「死のテープ」を聴くことができます。(うなされそうなので、私は絶対に聴きません。)

 

マインドコントロールの手口をもってすれば、人を死へも容易に追いやることができることの実例。戦慄しました。

 

感想:

この本では、心理学実験のみならず、レヴィーン博士が実際に販売員になる研修に潜り込んで見たりと、様々な視点からマインドコントロールの手法を明らかにしています。

ここで紹介することはしませんが、かなり具体的に書いてあるので、営業の仕事をされている方はすぐにでも活かせるのではないかと思いました。(もちろん、研修で学習済みかもしれませんが。)

 

細かいテクニックはいろいろあるのですが、カルトの教祖から自動車販売員、教師など、他人を説得する仕事で成功するための原理は共通なようです。

 

マインドコントロールは何も「特別引っかかりやすい人が特殊な状況で陥ってしまう、自分と関係のないこと」ではありません。

むしろ日常のあらゆる場面にテクニックが使われており、広告や訪問販売、セミナーや募金などの形で私たちに迫ってきます。

 

猜疑心でいっぱいになり、全てを拒む必要はありませんが、搾取されないように防衛策を取ることが重要だそうです。

 

一番危ないのが「自分は大丈夫」という幻想。

人は誰しも、自分のことを過大評価しがちなのです。

この幻想がある限り、必要な策を打つことができないので、結果的に騙されるリスクが高くなります。

 

騙しに対する免疫をつけるいい機会として、予防接種的に軽く騙されるか、騙される一歩手前までいくことが挙げられています。

実は、私はつい先日某怪しいビジネスセミナーに参加してきました。

そういった場は生まれて初めてだったのでなんの抵抗もなく、まんまと個人情報を取られてしまったのです。

幸い、友人と一緒だったので冷静になって話し合うことができましたし、お金が絡む契約は何もしていなかったのでなんとか踏みとどまれました。

今この本を読んでみると、あのセミナーの講師が使っていたテクニックの多くが載っていて、手練手管に舌を巻きました。

 

あなたも、自分は大丈夫と思わず、気をつけてくださいね。

 

この人の他の著書:

「あなたはどれだけ待てますか」

これは、文化の違いによる時間の捉え方の差について研究した本だそうです。

日本人は時間を守ることにこだわりがありますよね。

南の国はなんとなく大らかなイメージ。

面白そうなので、今度ぜひ読みたいです。