東大生の読書ライフ

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東大生による書評ブログ。

日本語の音の不思議

 

ネーミングの極意―日本語の魅力は音がつくる (ちくま新書)

ネーミングの極意―日本語の魅力は音がつくる (ちくま新書)

 

 言葉のイメージと音の関係性を紐解く「音相理論」の研究者が、世の中で流行した言葉や商品名などを例に日本語の音の不思議を教えてくれます。

 

音相理論とは

なぜ「朝日」という語から「大らかさ、明るさ、爽やかさ」のようなものがイメージとして伝わるのか。この仕組みは言語学や心理学などでは解明されていませんが、人々の言語生活では、意味に劣らぬ大事な働きをしていることは明々白々の事実です。(p52) 

 言葉の「音の響き」からイメージするものは人それぞれですが、実はたくさんの人が共通したイメージを持っている。その証拠に、音の持つイメージと意味がリンクした言葉は人々の記憶に残りやすく、逆に音と意味がマッチしていない言葉は流行らないそうです。

例えば、詳しくは割愛しますが、病名の「エイズ」は単なる略語:AIDSにも関わらず音相的に秀逸だったため広く知れ渡ったのに対し、同じく略語病名の「サース(SARS)」は知名度の低い言葉となりました。

 

ヒットするネーミングを作る難しさ

送り手は意味で制作し、受けてはそれを音で評価する。企業が多額の費用や時間をかけながらヒット・ネーミングが生まれにくいのは、送り手と受け手の間にこのようなすれ違いがあるからです。大衆の感性がこれほどまでに進んだ今日でも、ことばの音のイメージを真摯に考えようとしない古く安易な体制が制作側にあることは、大いに反省すべきことだと言えましょう。(p104) 

製品の背景知識や言葉についての専門知識があるネーミング制作側がいくら理屈をこねても、一般の消費者は語呂の良さなど、全く異なる感性でそれを受け取る。

このようなすれ違いを減らすために、音相理論があるのだと筆者は述べています。

 

音相の感性を鍛えるには

東京の地名でも一つの名前を人によっては違った音で読みます。秋葉原アキハバラとアキバハラ、神田の小川町をオガワマチとオガワチョウ、品川の戸越銀座をトコシギンザとトゴシギンザなど。どちらが正しいかで花Kて、別の読み方をすることで、表情が変わってくる。それは表情の受け止めかたの違いによるものだと言えましょう。(p201)

日本語は漢字の読み方が本当にたくさんあって、なんでこんなにややこしいんだろう...と思ってしまいます。

でも、異なる読み方をするのにはそれなりの理由、つまり地名なら町の雰囲気と名前の音のつながりがあるということですね。

こういうことを日々考えていると、響きの良い言葉に敏感になれるそうです。

 

おまけ

この本に「Onsonic」という、自分の名前などを入れて音相を分析してくれるプログラムの体験版がネット上で公開されていると書いてあったのですごく興味があったのですが、残念ながら今は公開されていないそうです。残念...