東大生の読書ライフ

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東大生による書評ブログ。

道徳って何?

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「子どもは善悪をどのように理解するのか?道徳性発達の探求」

長谷川真里

 

 

分野:倫理、発達

難易度:★★★★☆

コメント:

専門的な内容も含まれ、やや骨太。しかし、ドラマやアニメのストーリーなどを織り交ぜてわかりやすく説明してくれていてわかりやすい。

 

筆者情報:

2003年、お茶の水女子大学大学院博士後期課程終了、博士(人文科学)。現在、横浜市立大学国際総合科学部教授。

 

印象に残った話:

道徳観は年齢を重ねるにつれて発達するとは限らない、という話。1歳に満たない赤ちゃんでも、親切と意地悪の区別をはっきりとつけることができる。一方で、大人であっても状況によっては道徳に欠ける判断をしてしまうこともある。

 

まとめ、感想:

この本では、子どもが道徳性をどのように発達して行くのかをデータをもとに述べています。そこから浮かび上がるメッセージは、人の道徳は一生かけて発達させるものだ、ということだと思いました。

 

認知心理学者のカーネマンによると、人間関係の中で、相手が今どんなことを考えているのか、どんな意図で行動しているのかを認識する方法は、直感的に感じる方法と頭で考えて結論を出す方法の二種類があるそうです。

 

異文化間の交流に乏しく、家族や小さな村社会の中だけで生きるなら、直感的に相手の考えていることは大体分かるし、それで不自由ないでしょう。

 

しかし、グローバル化が進んだ現代において、異文化を理解することが必要になるなか、自分とは異なるバックグラウンドを持つ相手のことを考えるならば、直感的に感じるだけではダメなのです。

 

実際、私自身留学生の友人が何人かいますが、確かに日本人にはないような考え方や行動をすることもあります。

 

直感で判断すれば、訳のわからないことをする人とはもう付き合えない、となってしまうかもしれません。

しかし、どんなことにも理由があり、彼らの文化的背景を考えれば当然だったりします。

こうやって、相手の背景を考えて判断することが、今求められている道徳なのだと思いました。

日本人だって、外国に行けば外国人なわけで、日本人は理解に苦しむ、とか思われてるかもしれませんしね。

 

この人の他の著書:

言論の自由に関する社会的判断の発達」(風間書房、2004年)など。