東大生の読書ライフ

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東大生による書評ブログ。

上司の圧力に屈しなかった青年

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「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」

鴻上尚史(2017、 講談社現代新書

 

こんな人におすすめ:

上司(親、先生)からのパワハラに悩んでいる方、特攻隊に興味がある方

分野:近現代史

難易度:★★☆☆☆

コメント:

 

筆者情報:鴻上尚史(こうかみしょうじ)

作家・劇作家。早稲田大学在学中の1981年に劇団「第三舞台」を結成。舞台公演のかたわら、エッセイや演劇関連の著書も多く、ラジオパーソナリティ、テレビ番組の司会、映画監督など幅広く活動。

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まとめ:

太平洋戦争末期、当時21歳の佐々木友次さんは腕利きのパイロットだった。特攻を何としても成功させたい旧日本軍の思惑で、友次さんは初期の特攻に命じられてしまう。しかし友次さんには命を無駄にせず、戦い続けるという信念があった。絶対に死んで来いという上官(上司)に逆らい続け、なんと9回も特攻隊として出撃し、9回とも生還する。

この本には、2016年、92歳まで生き続けた友次さんに対する鴻上氏のインタビューが収録されている。

 

感想:

上官の言うことには絶対服従の旧日本軍で、こんな人がいたとは。驚きでした。

上官から大きな圧力を受け、同胞が判断力をなくして自殺攻撃に出発していく中、自分だけは考えることをやめず、自分の力で判断していたことに、尊敬の念を感じてやみません。

データで検証すると、特攻の成功率は低く、作戦としてなっていなかったようです。

最後の方は、もう兵を死なせることだけが目的の、ただの精神論になっていました。

日本はこれだけ勤勉な国民性で、科学も当時高いレベルにあったのに、国の方針として思考停止の精神論になってしまったことがとても残念です。

 

しかも、上官も国民も、当時はみんな正しい目的のために動いていると信じていました。

スターウォーズにも自分たちの戦いに正義を与えてくれ、でないと死んだ仲間に申し訳が立たないというセリフがありましたが、人間、正義のためでないと犠牲を払ったりはできないものなのだと思います。

私は、そこが一番人間の怖いところだと思います。

 

自分を正当化することは簡単です。

どんなに残虐な行為や狡猾な騙しでも、「正しい目的」を作ることはできます。

そして、人間はそれを信じたいのです。

 

しかし、私は思います。

いかなる目的であっても、暴力はいけません。

なんだか小学校の標語みたいですが、今のところ私の人生における大原則がこれです。

暴力、人の命や人生を軽んじることは、どんな理由をつけても正当化できないと私は信じています。

 

この人の他の著書:

佐々木友次さんのことを小説にした「青空に飛ぶ」(講談社)もあります。